3月に入りいよいよ春に向かって暖かく…と思いきや、自然界では2月に入ればすでに春の動きが始まっています。気温差や天気の変化も多くなる春先に体調を崩す方が増えてきます。
そろそろ草木が芽を出す2月中旬~3月頃。昔から「木の芽どき」とか「芽吹きどき」などと呼ばれるこの時季、人間にとっては心身ともに調子を崩しやすいとされています。「木の芽時」は「気の滅時(気が滅入る時)」とも書けそうですね。
東洋医学では「春」は思考をコントロールする「肝」が盛んになる季節です。集中力や閃きが増す反面、盛んがゆえに消費が激しく、疲れてくるとコントロールが利かず精神が乱れがち。ソワソワ・イライラ…やけに気分が落ち着かなかったり、何か気が乗らなかったり。
さらに、憂鬱な気分は血流の低下を招くなどして体全体にも影響を与え、様々な不調に繋がります。このように古来から季節と心身の深い関係性が言われています。
似たものに5月病というのがありますね。
あれは4月の年度替わりで新しい環境での緊張や忙しさに追われ、そこから一時開放されるゴールデンウィークという激しいOn-Offが生み出す憂鬱で、現代のカレンダー事情が生み出す人工的なものと言えるでしょう。
毎週のサザエさん症候群とか…若い人にもまだ通じるんでしょうかね(苦笑)
対して木の芽時は自然の摂理なので誰しもが影響を受けており、ある程度以上を抗うことは困難です。しかし東洋医学にはその影響を調整する知恵があります。セルフケア「養生」で予防・対策し、手に負えない時には漢方や鍼灸の「治療」でおさめる。春に限らずそれぞれの季節に沿った生活をするだけでも、元気を保ったりある程度の不調は回復できます。
特に1年の中で春の位置づけは、冬に蓄えたエネルギーを夏に向けて運ぶ役割です。春の体調不良は、夏に使うはずだったエネルギーを前借りで消費してしまうことになり、肝心の夏にバテて不調を起こしやすくなります。ほかにも、頑張り過ぎも消耗になり同じこと。
春をどれだけ無難に過ごすかによって、夏の体調も変わってくるわけですね。
春眠暁を覚えず…ではないですが、盛んになる思考を少し休ませてあげるのも春の養生です。養生というと「アレやれ!コレやれ!」と頑張ることばかり考えがちですが、時にはゆるりと過ごすことも大切なんですよ。