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コラム

刺激の器~治療のあれこれ~

刺激といってもいろいろ…

触る・押す、熱い・冷たいといった体への刺激。驚く・怒るなど感情の変化は精神的な刺激。

私たちは日々にあらゆる刺激を受けていますが、共通して言えることは「過剰な刺激は悪影響を及ぼす」ということです。東洋医学では「嬉しい」や「楽しい」、「感動」などの良いイメージの刺激も、過剰になると悪影響が出るとされています。

 

電気治療やマッサージは強くないとやった気がしないと言う方もいますが、その後に痛みが増したり体がだるくて動けなくなったりと、不快な経験をした方もいるようです。いわゆる「もみ返し」というもので、これは刺激過剰(やり過ぎ)による悪影響なのです。

 

 

人間は、刺激に対する器を持っているとイメージしてください。刺激を受けるたび、その器に水を注ぎます。そして器から水が1滴でも溢れたとき、悪影響が出るわけです。器の大きさには個人差があり、お猪口くらいの人もいればバケツほどの人、もっと大きい人…さまざまです。また、その日の状態によっても変わってきます。

 

この「刺激の器」を知る術は時代と共に廃れてしまい、現代の日本においては僅か、東洋医学の中に残っているだけと言っても過言ではありません。

年齢や性別・体格などから基準を設けて一応の予測をしていることはあります。しかし万人が同じ基準で合うわけではなく、個別に、しかもその日の状態に合わせた器を明確に知る必要があるといえるでしょう。

 

鍼灸師は、東洋医学独特の診察法により、その人の体質や症状の性質を探るとともにこの「刺激の器」の大きさも診ています。その大きさに合わせて鍼やお灸の数・強さを決めているわけです。器の大きさを無視すれば、鍼やお灸も簡単にもみ返しを起こします。

日本人は民族的に刺激の器がそんなに大きくありません。そのため日本では、鍼灸治療はとてもやさしく繊細に発展しました。見るからに体が屈強な欧米、民族的には同じでも中国・韓国などでは、刺激の器がもともと大きいので強い刺激が向いています。中国の鍼は太く・強く・痛いといったイメージだったり、韓国の歴史ドラマで太い鍼を刺すシーンがあるのはそのためです。

 

ただ、器の大きい人に弱い刺激だと効かないかというと、そういうわけではありません。大病に対して相応の威力が必要であれば強い刺激を行う場合があることも事実ですが、弱くても適切な刺激であれば十分な効果があります。鍼の本場といわれる中国の方が、刺したかどうかも分からない日本の鍼灸の虜になってしまうこともしばしばです。

 

また、中国に長年留学して本場の技を修得した先生方も、帰国後にはその強い治療をそのまま行うのではなく、日本式に工夫を凝らして活躍されています。

【必ずお読みください】当院における今後の対策方針